親の様子がちょっと変…認知症の初期サイン7つと受診の目安

『あれ、最近ちょっと変化も…』それは認知症の初期症状かも。その直感を大切に。 自宅介護と家族の悩み

久しぶりに帰った実家。冷蔵庫を開けると、同じ豆腐が4パック並んでいた。電話では同じ話が増えた。「年のせいかな」と思いたい自分と、「何かおかしい」と感じている自分がいる。

この記事では、認知症の初期サインを7つと、加齢のもの忘れとの見分け方、そして「気づいたら次に何をするか」までをまとめました。いま感じているその違和感の正体を、確かめるための地図として使ってください。

介護施設で生活相談員をしているわすれものです。ご家族の相談を受けていると、「もっと早く気づいていれば」という言葉を本当によく聞きます。でも同時に、早く気づけた方の多くが「あのとき違和感を流さなくてよかった」とも言われます。

加齢のもの忘れと認知症のサイン、ここが違う

年を取れば、誰でも物忘れは増えます。違いを見るポイントは「体験の一部を忘れるか、体験ごと忘れるか」です。

昨日の夕飯のメニューを思い出せないのは、加齢の範囲です。夕飯を食べたこと自体を忘れて「まだ食べていない」と言うなら、注意が必要なサインです。ヒントを出せば思い出せるか、忘れている自覚があるか、生活に支障が出ているか。この3つも合わせて見てください。

もうひとつ知っておいてほしいのが、初期の方ほど「取り繕い」がうまいことです。できなくなっている自覚が少し残っているぶん、人前では話を合わせて切り抜けます。たまに会う親戚には普通に見えて、毎日接する家族だけが違和感を持つ。これはよくあることで、あなたの気のせいではありません。

見逃したくない7つのサイン

現場やご家族の相談でよく聞く順に並べました。ひとつ当てはまったから認知症、というものではありません。「いくつも重なる」「以前と明らかに違う」が目安です。

サイン1|同じことを何度も言う・聞く

数分おきに同じ質問が返ってくる。話したこと自体を忘れているサインです。電話で同じ話が繰り返されるようになった、という気づき方も多いです。このとき「さっきも聞いたよ」と責めても、本人は初めて聞いたつもりなので傷つくだけです。確かめたい気持ちは、メモに向けてください。

サイン2|冷蔵庫や棚に同じものが増える

買ったことを忘れて、また買う。同じ調味料や食材が並び始めたら、記憶のサインかもしれません。逆に、冷蔵庫の中身が傷んだまま放置されているのも同じ系統のサインです。

サイン3|料理の段取りが崩れる

料理は「並行して段取りする」高度な作業です。得意だった料理の品数が減る、味付けが変わる、同じメニューばかりになる。こうした変化は、段取りの力が落ちてきたサインとして現れやすいものです。

サイン4|お金の管理にミスが出る

支払いの重複、公共料金の滞納、財布が小銭でパンパンになる(レジで小銭を数えられずお札で払うため)。お金は変化が数字に出るぶん、気づきやすい場所です。心当たりがあれば認知症の親のお金の管理も読んでみてください。

サイン5|日付や約束があいまいになる

通院日を間違える、約束をすっぽかす、曜日の感覚がずれる。カレンダーに書いてあるのに見ない、書いたこと自体を忘れる、という形で現れます。季節外れの服装(真夏にセーターなど)も、時間の感覚のずれとして同じ仲間のサインです。

サイン6|趣味や外出への興味が薄れる

好きだった畑や編み物をやめてしまう。外出がおっくうになる。身だしなみに構わなくなる。「うつかな」と見える変化が、実は認知症の始まりだったというケースもあります。

サイン7|怒りっぽくなる・人が変わったように見える

温厚だった親が、ささいなことで怒る。頑固になる。これは性格の問題ではなく、「できないことが増えていく不安」が苛立ちとして出ている場合があります。責められている感覚に敏感になっているので、こちらの言い方がきつくなるほど、怒りも強くなります。

サインに気づいたら、次にすること

まずは、かかりつけ医に相談してください。もの忘れ外来や認知症専門の窓口がある病院なら、より詳しく調べてもらえます。「認知症かどうか」を家族が判断する必要はありません。判断は医師の仕事で、家族の仕事は「気づいたことをメモして伝える」ことです。いつから、どんな場面で、何があったか。この記事のサインに沿ってメモするだけで、立派な受診材料になります。「半年前から同じ質問が増えた」「先月、電気代を二重に払っていた」。こうした具体的なメモがあると、診察は格段に進めやすくなります。

本人が受診を嫌がる場合は、「健康診断のついでに」「私が心配だから一緒に来てほしい」という誘い方が入りやすいです。正面から「認知症の検査に行こう」と言う必要はありません。プライドを守りながら診察につなげる方が、結局は早道です。どうしても難しければ、地域包括支援センター(高齢者と家族の総合相談窓口)に相談すれば、進め方を一緒に考えてくれます。

早く動く意味は、ふたつあります。ひとつは、治療や進行を遅らせる選択肢が広がること。もうひとつは、本人が自分の意思を伝えられるうちに、これからのことを話し合う時間を持てることです。

離れて暮らしている場合のチェックポイント

遠距離の場合は、帰省のたびに見る場所を決めておくと変化に気づきやすくなります。冷蔵庫の中身、郵便物の山(未開封の請求書や督促状がないか)、部屋の掃除の状態、車に新しい傷がないか。電話では、同じ話の頻度と、日付や曜日の受け答えがバロメーターになります。

「前回と比べてどうか」が判断の軸になるので、気づいたことは日付とセットでスマホにメモしておいてください。数か月分たまると、変化がはっきり見えてきます。

親を疑うようで苦しい、というあなたへ

「親のことをチェックするみたいで嫌だ」と感じるかもしれません。その気持ちは、あなたが親を大事に思っている証拠です。でも、サインを確かめることは親を疑うことではなく、親を守る準備です。何もなければ安心できて、何かあれば早く支えられる。どちらに転んでも、確かめた方が親のためになります。

この先もし診断がついたら、症状ごとの対応は認知症の困りごと対応ガイドにまとめています。地図はもう用意してあるので、そのときはひとりで抱えずに戻ってきてください。

よくある質問

Q. どこまでが様子見で、どこからが受診ですか?

サインがひとつだけ・たまにある程度なら、メモを取りながらの様子見でかまいません。複数のサインが重なる、数か月単位で明らかに進んでいる、お金や火の元など生活の安全に関わるミスが出ている。このどれかに当てはまったら、受診を考える段階です。

Q. 本人はまったく困っていない様子です。それでも認知症の可能性はありますか?

あります。認知症の初期サインは、本人の自覚より先に、周りの違和感として現れることが多いのです。取り繕いがうまい時期は、本人が困りごとを認めないのも自然なことです。だからこそ、毎日を知っているあなたの「ちょっと変かも」が、いちばん早い検査のきっかけになります。


違和感は、いちばん近くにいる人にしか拾えません。今日はまず、気づいたことをスマホのメモにひとつ書き残すことから。

わすれもの
わすれもの

相談の場で「考えすぎでしょうか」と聞かれたら、私は「考えすぎでも来てよかったんですよ」と答えています。空振りなら笑い話で済みます。違和感を持ってここまで読んだあなたの直感は、大事にしていいものですよ。

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