病院から「退院までに次の行き先を」と言われ、ケアマネに勧められるまま特養に申し込んだ。でも、この先どうなるのか、いつ入れるのか、誰も教えてくれない。「待つしかない」と言われても、その待ち方が分からない。
この記事では、特養入所の流れを、家族からよく受ける5つの疑問に答える形で説明します。先にいちばん大事なことを言うと、特養は申し込んだ順ではなく「必要性の高い順」に入所が決まります。だから、流れと仕組みを知っているかどうかで、待ち方が変わります。
介護施設で生活相談員をしているわすれものです。入所判定に関わる立場から、申込みの内側で何が起きているのかをお話しします。
疑問1|申し込めば、すぐに入所できる?
できません。申込みは「入所待ちの名簿に載るための手続き」です。
流れはこうです。申込み書類をもとに、施設で「入所判定委員会」が開かれます。施設長・相談員・看護師のほか、地域の民生委員などが加わって話し合い、必要性を点数で評価します。その点数で名簿に載り、ベッドに空きが出たら、順位の高い方から順に声がかかります。ここで初めて入所です。
つまり「申込み→判定委員会→名簿掲載→空き待ち→入所」という流れで、申込みはスタート地点にすぎません。
そして名簿の順位は、固定ではありません。あとから申し込んだ方でも、必要性が高ければ上位に入ります。逆に言えば、待っている間に状況が変われば、順位も動くということです。
声がかかってから入所までは、面談や健康状態の確認を経て日程を決めていくのが一般的です。連絡が来たその日に入所、ということはまずないので、慌てなくて大丈夫です。
疑問2|入所判定委員会は、いつ開かれる?
施設によって違いますが、年に2回から4回ほどのところが多いです。開催の前月末が申込み締切になるのが一般的で、たとえば3月開催なら2月末締切、名簿に載るのは4月から、という流れになります。
ここで大事なのは、締切を過ぎると次の委員会まで名簿に載らない、ということです。申込みを考えているなら、まず施設に「次の判定委員会はいつですか」と聞いてみてください。
なお、複数の施設に申し込むこと自体は珍しくありません。その場合、判定はそれぞれの施設で別々に行われます。施設ごとに委員会の時期も締切も違うので、候補ごとに確認しておくと安心です。
「急いでいるのに、次の委員会が半年先だった」ということも実際に起きます。入所を少しでも考え始めたら、締切の確認だけでも早めに動いておくのがおすすめです。
疑問3|要介護度は関係ある?
あります。2014年の介護保険制度改革により、特養の入所申込みは原則「要介護3以上」とされています。
ただし、要介護1・2でも「特例入所」という形で申し込める場合があります。次のいずれかに該当するときです。
- 認知症で、在宅生活が困難
- 知的障害や精神障害などを伴い、在宅生活が困難
- 家族からの虐待がある
- 単身世帯、または同居家族が高齢や病弱で、地域の介護サービスだけでは在宅生活が困難
「うちは要介護2だから無理」とあきらめる前に、状況を施設かケアマネジャーに相談してみてください。
そもそも要介護認定をまだ受けていない場合は、そこからです。市区町村の窓口か地域包括支援センター(高齢者と家族の総合相談窓口)で認定の申請をするところから始まります。
疑問4|入所の順番は、何で決まる?
判定委員会での点数付けで決まります。見られるのは、大きく4つです。
ひとつめは本人の状況。介護度が高いほど点数は高くなり、認知症の程度や障害者手帳の有無で加点されます。ふたつめは介護サービスの利用状況。ショートステイやデイサービスの利用、入院の期間などが評価されます。
みっつめは介護している家族の状況です。独居か、介護者が高齢か、病気や障害はないか、仕事や育児を抱えていないか、ほかに支援してくれる人はいるか。ここが意外と大きく見られます。
最後に特記事項。長期間の介護、在宅での医療処置、住環境の問題、遠距離介護、病院や施設から退所を迫られている、家族の介護拒否など、委員会の判断で加点されます。
だからこそ、申込み書類には家庭の大変さを遠慮なく書いてください。「頑張れています」と書けば書くほど、必要性は低く評価されます。ありのままを書くことが、正しい評価につながります。
たとえば、夜中に何度も起こされている、介護者が腰を痛めている、仕事を休みがちになっている、通いの距離が遠い。こうした具体的な事実は、すべて判断の材料です。書ききれなければ、別紙や口頭で相談員に伝えても構いません。
点数そのものや細かな順位は、施設によって開示の考え方が違います。ただ「どんな点が評価に関わるか」を知って書くのと知らずに書くのとでは、書類の厚みがまるで変わります。
疑問5|入所できるまで、どう待てばいい?
「いつごろ入れますか」という質問には、正直、誰にも答えられません。ベッドの空きは予測できないからです。だから、待つ間の生活を先に組み立てておくことが現実的な備えになります。
つなぎとしてよく使われるのが「ロングショートステイ」です。ショートステイ(施設への短期のお泊まり)を長期で続ける使い方で、これを利用しながら特養の空きを待つ方は実際に多くいらっしゃいます。同じ施設のショートステイを使っていれば、特養に入所しても環境やスタッフが変わらず、本人の負担が少ないのも利点です。使えるかどうかは、ケアマネジャーに相談してください。日数や費用の組み立ても含めて、一緒に設計してくれます。
そして待機中は、介護するあなた自身の休みも計画に入れてください。単発のショートステイやデイサービスで、意識して息をつく日を作る。あなたが倒れてしまったら、入所を待つどころではなくなります。
もうひとつ。待っている間に介護の状況が変わったら(介護者の入院、介護度の変更など)、必ず施設に伝えてください。判定の材料が変わるので、順位に影響することがあります。申し込んだまま放置せず、状況をつないでおくことが大切です。
待つ時間も、ひとりで抱えないでください
特養を申し込む段階のご家族は、たいてい在宅介護の限界が近いところまで来ています。「待てと言われても、もう限界」という声を、私は何度も聞いてきました。その気持ちごと、ケアマネジャーや施設の相談員にぶつけて大丈夫です。つなぎの手を一緒に探すのが、私たちの仕事です。
特養入所の流れは、知らないままだと「ただ待つだけ」の時間になります。仕組みが分かれば、締切を確認する、書類に実情を書く、状況の変化を伝える、つなぎのサービスを整える、と動ける場所が見えてきます。待つ時間を、備える時間に変えてください。
施設選びで個室か多床室かを迷っている方は個室と多床室の違い7つを、施設に預けることへの罪悪感がある方は親を施設に入れた罪悪感がつらいあなたへを読んでみてください。
申込みはゴールではなくスタートです。まず、候補の施設に「次の判定委員会はいつか」を聞くところから始めてください。その電話一本が、最初の一歩です。
施設を考え始めてから入居後までの全体像は親を施設に入れる前に読むガイドにまとめています。いま読んでいる場面の、前と後ろも見通せます。

入所判定の場に相談員として座っていると、書類の一行から家庭の限界が透けて見えることがあります。遠慮して軽く書いてしまう方が本当に多いんです。大変なことは大変と、そのまま書いてください。それがご本人と家族を守る一番の近道です。


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