介護現場では、日々のケアの中で「ヒヤッ」とする瞬間が少なくありません。
転倒しそうになったり、薬を間違えそうになったり──。
それらの“事故になりかけた出来事”をヒヤリハットと呼びます。
施設で生活相談員をしているわすれものが、介護現場でよく起きる8場面をまとめたヒヤリハット事例集です。転倒・誤薬・誤嚥・挟み込み・入浴・認知症の方の行動・預かり金・送迎の順に、それぞれ「事例」「原因」「対策」を並べています。研修や勉強会、申し送りの資料をつくるときは、必要な場面だけ抜き出して使ってください。
冒頭の研修用ワークシート(PDF)は、印刷して配ればそのまま勉強会が回せる形にしてあります。よろしければお使いください。

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【無料】研修用ワークシート(PDF・A4 3枚)
この記事の「1. 転倒・転落」を、そのまま勉強会で使える形にしました。事例を読んで原因と対策を書き込む欄、解答例、実施記録の様式が入っています。所要15分の進め方つきです。
👉 ヒヤリハット研修ワークシート ①転倒・転落(PDF)をダウンロード
職場内での印刷・配布は自由です。登録も入力も要りません。法定研修の要件を満たすことを保証するものではないため、実施時間や記録様式は所属法人・指定権者の基準をご確認ください。
1. 転倒・転落のヒヤリハット
●事例
トイレに向かう途中、利用者がベッドから立ち上がり転倒しかけた。
職員がすぐに支えたため、ケガには至らなかった。
●原因
- ナースコールを押す習慣がついていなかった
- ベッド周囲に手すりや歩行補助具がなかった
- 職員が巡視するタイミングが遅れた
●対策
- 定期的な巡視と声かけを徹底
- ベッド周囲の環境整備(手すり・スリッパ位置)
- トイレ誘導の時間を決めて予防的ケアを行う
ポイント:「自分で行きたい」を尊重しながらも、“転ばせない工夫”が大切です。
2. 誤薬・薬の飲み間違いのヒヤリハット
●事例
Aさんに配薬する予定の薬を、同室のBさんに渡しかけた。
他職員が確認して気づき、未然に防止。
●原因
- 配薬の時間帯に職員が多忙だった
- 名前の確認を省略していた
- 薬袋やトレーの表示が見づらかった
●対策
- 「声に出してダブルチェック」を習慣化
- 名前・顔写真付きの配薬表を使用
- 配薬時は他作業を中断し、集中できる環境を整える
ポイント:「慣れた人ほど間違える」──確認の仕組みをチーム全体で共有しましょう。
3. 食事・誤嚥のヒヤリハット
●事例
利用者が食事中にむせ込み、のどに詰まりかけた。
職員がすぐに介助し、吸引対応で回避。
●原因
- 食事形態(刻み・ミキサー)が合っていなかった
- 職員が離れて他の対応をしていた
- 姿勢が崩れた状態で食べていた
●対策
- 食事前に「姿勢・形態・スピード」を再確認
- むせやすい利用者には見守り強化
- 食事介助時は“ながら作業”を避ける
ポイント:「ほんの一瞬の油断」が命に関わる。観察と声かけが事故を防ぎます。
4. 介助中の挟み込み・ぶつかり事故
●事例
車椅子の移乗中に、利用者の手が肘掛けに挟まりそうになった。
職員が気づき、ケガはなし。
●原因
- 介助時の声かけが不足
- 車椅子やベッドの位置がずれていた
- 複数人介助の連携不足
●対策
- 介助前に「いきますよ」と必ず声をかける
- 機器位置・高さを正しくセット
- 新人職員への移乗指導を強化
ポイント:「慣れ」や「焦り」から起こる事故。基本動作の確認が最大の予防策です。
5. 入浴時の滑倒・やけどのヒヤリハット
●事例
浴室でシャワーの温度を上げすぎ、利用者が驚いて立ち上がり転倒しかけた。
●原因
- 温度確認を怠った
- 浴室マットがずれていた
- 職員配置が不足していた
●対策
- 入浴前に湯温・床の状態を必ずチェック
- マット固定や滑り止め対策を強化
- 二人体制での入浴介助を徹底
ポイント:「安全確認 → 声かけ → 介助開始」の流れを習慣に。
6. 認知症の方の行動のヒヤリハット
●事例
夕方、認知症の利用者が「家に帰る」と言って玄関の自動ドアの前に立っていた。通りかかった職員が気づいて声をかけ、外には出なかった。
●原因
- 夕方は不穏になりやすいのに、職員が記録や送迎で持ち場を離れていた
- 玄関のセンサーやチャイムの確認をしていなかった
- 「帰りたい」という訴えを、その前から聞き流していた
●対策
- 夕方の時間帯は、フロアに必ず1人残る配置にする
- 止めるより先に「一緒に行きましょうか」と横に並んで歩く
- 訴えが出始めた時間と様子を記録し、次の日の見守りに生かす
ポイント:玄関を施錠すれば済む、とはいきません。どこからが身体拘束にあたるかは身体拘束のグレーゾーンで整理しています。夕方の不穏そのものへの接し方は夕暮れ症候群の記事へ。
7. 預かり金・私物のヒヤリハット
●事例
ご家族から預かった現金を出納帳に記入する前に、別の対応に呼ばれた。あとで数えると帳簿と合わず、ほかの職員と一緒に確認して記入漏れと分かった。
●原因
- 受け取りから記入までを1人で行っていた
- 途中で作業が中断された
- ご家族との受け渡しを口頭だけで済ませていた
●対策
- 現金の受け取りは2人で数え、その場で記入してサインする
- 記入が終わるまでは、ほかの作業に移らない
- ご家族にも受け取りの控えを渡す
ポイント:お金のヒヤリハットは、ケガがないぶん軽く見られがちです。けれど一度こじれると、ご家族との信頼を戻すのに時間がかかります。
8. 送迎・デイサービスのヒヤリハット
●事例
デイサービスの送迎で、利用者が車のステップを降りるときに足を踏み外しかけた。横にいた職員が腕を支え、転倒には至らなかった。
●原因
- 運転手が運転席に座ったまま、乗り降りを見ていなかった
- 次の送迎先の時間に追われていた
- 雨でステップが濡れていた
●対策
- 乗り降りのときは、運転手も必ず車の外に出る
- 発車前に「シートベルト・ドア・足元」を指差しで確認する
- 雨の日は踏み台やタオルを車に積んでおく
ポイント:送迎は「移動」ではなく介助の一場面です。施設の外なので、人手が足りないまま始まりやすいのが怖いところ。
研修・勉強会でヒヤリハット事例を使うときは
事例を配るだけでは、「気をつけよう」で終わってしまいます。先に事例の部分だけを読んでもらい、原因を3つ挙げてもらうやり方があります。答え合わせで対策を見ると、自分の現場に置き換えて考えやすくなります。
事故になってしまったときの報告書の考え方は、事故報告書は何のために書くのかにまとめています。
まとめ:ヒヤリハットは“責める”ではなく“共有する”
ヒヤリハット報告は、誰かを責めるためのものではありません。
「同じことを繰り返さないための学び」として共有することが大切です。
職員同士で「こんなことがあった」「こうすれば防げたかも」と話し合うことで、
事故を未然に防ぐ“安全な職場文化”が育ちます。



