高齢者施設で生活相談員をしておりますわすれものです。
介護の現場では、「経験」や「感覚」が大切にされています。
ご利用者の表情やちょっとした変化に気づけるのは、長年の経験があるからこそ。
しかしその一方で、“感覚だけでは伝わらないこと”も多いのが現実です。
同じご利用者でも、見る職員によって「元気」「疲れている」と判断が分かれることはありませんか?
そんなときに大切なのが、数字で見える介護という考え方です。
なぜ介護に数字が必要なのか
介護は「人の暮らし」を支える仕事。
だからこそ、感覚的な判断や温かい対応が欠かせません。
ただ、それだけでは“伝わらない・評価できない”ことがあります。
たとえば──
- 「よく食べていた」ではなく「食事摂取量 200g(前回より+50g)」
- 「歩けるようになった」ではなく「歩行距離 5m → 10m」
- 「水分が足りないようだ」ではなく「1日摂取量 700ml → 1,000ml」
このように数字を添えることで、状態の変化が誰が見ても同じように理解できる形になります。
数字は「共通のものさし」なのです。
数字がチームケアを強くする
介護はチームで行うものです。
看護師・リハビリ職・ケアマネジャー・ご家族——さまざまな立場の人が関わります。
もし、ある職員が「〇〇さん、最近元気そうですよ」と言っても、
聞く人によって“元気”のイメージはバラバラです。
一方で「〇〇さん、食事摂取量が先週より20%増えています」と伝えたらどうでしょう。
これは誰が聞いても「改善している」とわかります。
数字があると、チーム全体で“共通認識”を持てるのです。
さらに、家族への説明にも役立ちます。
「この1か月で歩行距離が2倍になりました」と数字で示すと、
「そんなに良くなっていたんですね」と信頼が深まることも多いです。

感覚と数字、どちらも大切にするバランス
もちろん、数字だけに偏ると“冷たい介護”になってしまいます。
数字に表れない部分にも、介護の大切さはあります。
- 「笑顔が増えた」
- 「話しかけに反応してくれるようになった」
- 「自分からトイレに行くようになった」
こうした“感覚的な変化”は、数字では測れないけれど、暮らしの質(QOL)を示す重要なサインです。
つまり、介護には「数字で見る部分」と「心で感じる部分」の両立が欠かせません。
数字を活かした介護の実践方法3つ
記録を具体的にする
「食事:半分」より「食事:約200g(全量の50%)」と書く。
「トイレ誘導:2回成功」など、具体的な数値で残すことで、次に見る人がすぐ理解できます。
変化を見える化する
グラフやチェック表を活用し、食事量や歩行距離を「見える形」にします。
“目に見える変化”がモチベーションにもつながり、介護の成果がチーム全体で共有できます。
定期的に数字を振り返る
記録して終わりではなく、カンファレンスなどで「前月よりどう変わったか」を確認します。
数字をもとに振り返ることで、次のケアの方針が明確になります。
現場で感じた「数字の力」
私の職場でも、以前は「なんとなく良くなった」「たぶん減っている」といった会話が多く、
結局「誰がどう判断したのか」が曖昧でした。
そこで、「歩行距離」「摂取量」「排泄回数」などを簡単に記録するようにしたところ、
小さな変化が“見える”ようになりました。
数字で「変化を見せる」ことは、スタッフのやりがいにもつながります。
「自分たちの支援で、ここまで改善したんだ」と実感できる瞬間が増えたのです。
まとめ:数字は“信頼”と“安心”を生むツール
介護における数字とは、単なるデータではありません。
それは、ケアの質を“見える化”し、関わる人すべてに安心を与えるツールです。
感覚に頼る優しさと、数字で支える確かさ。
この2つのバランスが取れたとき、介護はもっと伝わりやすく、もっと豊かな支援になります。
 
  
  
  
  
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