「チームケア」と「個別ケア」、どちらも介護で大切と言われるけれど、現場でどう両立させたらいいの?──。
介護施設で生活相談員25年・介護リーダー15年の経験を持つ「わすれもの」が、現場で実際に効いている 5つのコツ をまとめました。
この記事でわかること:
- チームケアとは何か(一言で)
- 個別ケアとの違い
- 両立するための具体的な5つの方法
チームケアとは、介護職・看護師・リハビリ職・ケアマネジャー・生活相談員などの多職種が連携し、情報を共有しながら一人のご利用者を支えるケアのことです。それぞれの専門性を持ち寄って事故やミスを防ぎ、その人らしい暮らし(個別ケア)をチーム全員で実現することを目指します。
チームケアとは?
チームケアとは、介護職員・看護師・リハビリ職・ケアマネジャーなど、多職種が連携してご利用者を支えることです。
- 情報を共有して事故やミスを防ぐ
- それぞれの専門性を活かし、幅広い支援ができる
- 職員同士が助け合うことで、精神的な負担も軽減
例えば、夜間に体調の変化があった入居者さん。介護職員が気づき、看護師へ報告し、医師につなぐ。これがまさにチームケアの強みです。

なぜ今、チームケアが重視されるのか
近年、チームケアの重要性はますます高まっています。理由は大きく3つあります。
ひとつは、ご利用者の状態が重度化・複雑化していること。医療的なケアが必要な方や、複数の疾患を抱える方が増え、一人の職員・一つの職種だけで支えることが難しくなっています。
ふたつめは、認知症のある方の増加です。その日の体調や気分で状態が変わる方を支えるには、複数の目で変化を捉え、こまやかに情報を共有する必要があります。
みっつめは、介護現場の人手不足です。限られた人数で質を落とさずに支えるには、一人で抱え込まず、チームで役割を分け合う体制が欠かせません。
つまりチームケアは「理想論」ではなく、今の介護現場を回していくための現実的な土台になっているのです。
個別ケアとは?
個別ケアは、「その人らしさ」を大切にするケアです。
同じ高齢者でも、好みや生活歴、価値観は人それぞれ。
- 食事の好みを尊重する
- 入浴のタイミングを選べるようにする
- 声かけの言葉や方法を一人ひとりに合わせる
つまり、「ご利用者は“施設の一人”ではなく、“かけがえのない一人”」として接するのが個別ケアです。

チームケアと個別ケア、どちらが大事?
ここでよくある疑問が「結局、どっちが優先なの?」という点です。
実は、この二つは対立するものではなく、 お互いを補い合う関係 です。
- チームケアだけだと…「効率優先」で画一的になりやすい
- 個別ケアだけだと…職員ごとに対応がバラバラになりやすい
だからこそ、 チームで個別ケアを実現することが理想 なのです。

チームケアに関わる職種と、それぞれの役割
チームケアは、さまざまな職種がそれぞれの専門性を持ち寄って成り立っています。主な顔ぶれと役割を整理します。
- 介護職員:日々の生活を最も近くで支え、小さな変化に最初に気づく“チームの目”。
- 看護師:体調管理や医療的な判断を担い、介護職の気づきを医療につなぐ。
- ケアマネジャー:ケアプランを作成し、サービス全体をまとめる司令塔。
- 生活相談員:本人・家族・各職種の間に立ち、調整と橋渡しを担う。
- 機能訓練指導員(PT・OT):身体機能やリハビリの視点から支援を組み立てる。
- 管理栄養士:食事・栄養面から健康を支える。
- 医師:医療面の最終的な判断・指示を行う。
- ご家族:生活歴や本人の思いを伝える、欠かせない“チームの一員”。
とくに介護職と看護職は立場が違うぶん意見がぶつかりやすい場面もありますが、その向き合い方は「介護が上?看護が上?対立より大切な「チームで伴走するケア」」で詳しくお話ししています。
大切なのは、どの職種が上・下ということではなく、それぞれが対等に専門性を出し合うことです。介護職が拾った「いつもと違うな」という一言が、看護師・医師へつながり、大事に至らずに済む。これがチームケアの真価です。
チームケアの目的・メリット
チームケアが目指すのは、ひとことで言えば「ご利用者本位のケアを、安定して続けられる体制をつくること」です。具体的なメリットは次の通りです。
- 事故・ヒヤリハットを防げる:複数の目で見ることで、リスクの早期発見につながる。
- ケアの質が安定する:誰が対応しても一定の質を保て、対応のばらつきを減らせる。
- 本人の“その人らしさ”を守れる:個別ケアをチーム全員で実現できる。
- 職員の負担が分散される:一人で抱え込まず、精神的にも身体的にもラクになる。
チームケアを支える3つの土台
どんなに気持ちがあっても、それを支える「仕組み」がなければチームケアは続きません。土台になるのが次の3つです。
① 情報共有(申し送り・カンファレンス)
「Aさんは昨日から食欲が落ちている」——この一言が全員に届いているかどうかで、ケアの質は大きく変わります。申し送りやカンファレンスは事務作業ではなく、チームの命綱です。
② 報連相(報告・連絡・相談)
気づいたことを、ためらわずに、早めに、分かりやすく伝える。この当たり前を全員が実践できる職場は強いです。
③ 記録の活かし方
記録は「残すこと」より「次に活かすこと」が目的です。小さな変化を書き残し、チームで読み返すことで、ケアは積み重なっていきます。
チームケアと個別ケアを両立させる5つのポイント
情報共有を徹底する
「Aさんはお茶よりコーヒーが好き」といった小さな情報もチームで共有することで、誰が対応しても“その人らしいケア”につながります。
小さな気づきを大事にする
ご利用者の表情やしぐさから「今日は体調が良くなさそう」「この声かけの方が反応が良かった」といった小さな変化を拾い、チームに伝えることがケアの質を高めます。
マニュアルと柔軟性のバランス
基本的な流れやルールはマニュアルで統一しつつ、ご本人の希望に応じて臨機応変に対応できる余地を残すことが大切です。
振り返り・ケース検討の場を持つ
「このケアはAさんに合っていたか?」をスタッフ間で振り返り、必要に応じて改善していく。定期的なミーティングやカンファレンスが効果的です。
スタッフ間の信頼関係を築く
「自分が伝えた情報を同僚も活かしてくれる」と信じられる関係があると、情報共有や連携がスムーズになります。信頼はチームケアの基盤です。
チームケアの進め方(実践ステップ)
チームケアは、次の流れで回していきます。いわゆるPDCAです。
- アセスメント:本人の状態・生活歴・希望を把握する
- ケアプラン作成:目標と方針をチームで共有する
- 役割分担:誰が何を担うかを明確にする
- 実行:日々のケアを行う
- モニタリング:変化や反応を観察・記録する
- カンファレンスで見直し:うまくいったか振り返り、次へ改善する
この「振り返って直す」を止めないことが、チームケアを形だけにしないコツです。
訪問介護におけるチームケアの実践例
訪問介護では、施設のように同じ場所にスタッフが揃っているわけではありません。だからこそ、サービス提供責任者を中心に、訪問介護員(ヘルパー)・ケアマネジャー・看護師・主治医・ご家族が、連絡ノートや電話、ICTツールで情報をつなぐことがチームケアの基本になります。
- 訪問のたびに気づいた変化を連絡ノートやアプリに記録し、次の担当ヘルパーやケアマネへ共有する
- サービス担当者会議で、ヘルパー・看護・リハビリ・ご家族が方針をすり合わせる
- 体調の変化があれば、ヘルパーがサービス提供責任者を通じて看護師・主治医へ早めに報告する
在宅は「顔を合わせにくい」ぶん、記録と報連相の仕組みづくりが、訪問介護のチームケアの生命線になります。
チームケアがうまくいかない原因と対処
「うちのチーム、なんだか噛み合わない」——そう感じるとき、たいてい原因は次のどれかです。
- 情報が分断している(申し送りや記録が機能していない)
- 頑張る人とそうでない人の温度差がある
- リーダーが不在、または機能していない
- 人間関係がこじれて、言いたいことが言えない
対処の第一歩は、「人を責める」のではなく「仕組みを見直す」ことです。情報共有の方法を変える、役割をはっきりさせる、振り返りの場をつくる。仕組みが変わると、人の動きも変わります。
チームケアがうまくいっている職場の特徴
長く現場を見てきて、「ここはいいチームだな」と感じる職場には、共通点があります。
- 「ありがとう」と「ごめんね」を言い合える
- 小さな気づきを、気軽に共有できる空気がある
- 記録や申し送りが、ちゃんと次に活かされている
- ご家族への対応が丁寧で、信頼されている
特別なことではありません。ひとつずつ積み重ねることで、チームは確実に変わっていきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 新人ですが、チームにうまく馴染めません。どうすれば?
A. まずは「報告・確認」を丁寧にするだけで十分です。完璧を目指さず、分からないことを聞ける関係づくりから始めましょう。
Q. 家族もチームの一員なのですか?
A. はい。本人の生活歴や思いを最もよく知るのはご家族です。情報をいただくことで、ケアの質が上がります。
Q. 多職種で意見が割れたら、どうすればいい?
A. 「誰が正しいか」ではなく「本人にとって何が一番いいか」に立ち返るのが基本です。その判断材料を出し合うのがカンファレンスの役割です。
職種ごとの優先順位の違いは、特に介護と看護の連携の場面で表れやすいものです。
まとめ

- チームケア=多職種やスタッフ同士で支え合い、安心安全を守る
- 個別ケア=その人らしさを尊重する
- 両立のカギは「情報共有」「柔軟性」「信頼関係」
介護は効率だけでも、優しさだけでも成り立ちません。
チームの力を借りながら、一人ひとりの暮らしを支える。これこそが介護の本質なのです。
👉 介護を勉強している方には「現場をイメージするヒント」に、現場で働いている方には「日々の振り返りの材料」にしていただければ嬉しいです。

効率だけでも、優しさだけでも続きません。
チームで支えるから、長く続けられるんだと思います。


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