認知症の親が夜眠らない…昼夜逆転を戻す5つの対応

夜中に起き出して廊下を歩く認知症の母親と、その腕を支えて心配する娘のイラスト 自宅介護と家族の悩み

夜中の2時、物音で目が覚める。寝たはずの親が起き出して、廊下を歩いている。「まだ夜だよ」と声をかけても、「何を言ってるの、朝でしょう」と返される。

この記事では、認知症の親が夜眠らない理由と、昼夜逆転を戻すための5つの対応をまとめました。あわせて、介護するあなた自身が眠るための考え方も書いています。

認知症の夜間不眠は、本人のわがままでも、あなたの対応が悪いせいでもありません。体のしくみからくる、理由のある症状です。介護施設で生活相談員をしているわすれものです。ご家族から受ける相談のなかでも、夜の悩みはとくに多く、そしてとくに深刻です。眠れない日が続くと、心より先に体が壊れてしまうからです。

なぜ夜眠れないのか|考えられる3つの理由

対応の前に、理由を知っておくと気持ちが少し変わります。「わざとやっているわけではない」と分かるだけで、夜中のイライラは半分になります。

理由1|体内時計の働きが弱っている

人の体には、朝に目覚めて夜に眠るためのリズムがあります。認知症になると、このリズムを保つ働きが弱まります。もともと加齢だけでも眠りは浅くなるため、二重に夜起きやすくなるのです。

本人は「夜なのに起きてやろう」と思っているわけではありません。体の時計が昼と夜を取り違えている。そう考えてみてください。

「昼夜逆転」と呼ばれる状態は、こうして少しずつ進みます。夕方に眠り、夜中に目が覚め、明け方にまた眠る。日中はうとうとして、また夜に眠れない。この繰り返しです。

理由2|昼間の活動量が足りない

日中にやることがなく、うとうとする時間が長いと、夜に眠る力がたまりません。介護が始まって外出が減った方は、どうしても昼寝が増えます。昼に眠った分だけ、夜の眠りは浅くなります。

「夜眠らないから昼寝てもらって助かる」という声もよく聞きます。気持ちは分かりますが、これが続くと逆転は固定されていきます。

理由3|夜の不安と混乱

夜は暗くて、静かです。私たちには当たり前の環境でも、認知症の方には「ここがどこか分からない」という不安が強まる時間になります。夕方から落ち着かなくなる方も少なくありません。

不安で目が覚め、確かめるために起き出す。それが家族の目には「夜中の徘徊」に見えることもあります。

なお、急に夜の混乱が強くなったときは、体調の変化や薬の影響が隠れている場合があります。いつもと様子が違うと感じたら、早めにかかりつけ医へ相談してください。

昼夜逆転を戻す5つの対応

リズムは一日では戻りません。全部やろうとせず、できそうなものからひとつずつ試してください。

対応1|朝、カーテンを開けて光を浴びる

最初の一手は、朝の光です。起きる時間になったらカーテンを全部開けて、部屋を明るくします。朝の光には、ずれた体内時計を合わせ直す働きがあります。

散歩まで、できなくて大丈夫です。窓際の明るい席で朝ごはんを食べる。それだけでも意味があります。

対応2|昼間に「起きている理由」をつくる

洗濯物をたたむ、野菜の皮をむく、一緒に近所へ買い物に行く。昼間に小さな役割があると、うとうとする時間は自然に減ります。「やらせる」のではなく「手伝ってもらう」形にするのがコツです。できたら「助かった」と伝えると、次につながります。

昼寝をするなら30分まで、15時より前に。夕方の昼寝は、その夜の眠りをほぼ確実に浅くします。

「デイサービスに通った日はよく眠れる」という話も、ご家族からよく聞きます。昼間に人と関わって声を出すことは、家の中ではつくりにくい刺激です。通う日を増やせないか、ケアマネジャーに相談する価値はあります。

対応3|夕方からは「夜の準備」に切り替える

夕方以降のコーヒーや緑茶は控えめにします。カフェインは、高齢の方ほど体に長く残るためです。テレビの音量や部屋の照明も少しずつ落として、「これから夜になる」という合図を部屋全体でつくってください。

寝る前にトイレを済ませておくのも効きます。夜中に目が覚めるきっかけの多くは、尿意です。

真っ暗にすると不安が強くなる方には、廊下や枕元に小さな明かりを残す方法があります。足元灯は、夜中にトイレへ向かうときの転倒予防にもなります。

対応4|夜中に起きても、正さずに短く付き合う

それでも夜中に起きる日はあります。そのとき「夜中でしょう」「早く寝てよ」と正すのは、実は逆効果です。本人のなかでは朝なので、否定されると不安と興奮が強まり、ますます眠れなくなります。

おすすめは「短く付き合ってから、戻す」流れです。まず「どうしたの」と一言だけ聞く。トイレなら済ませてもらい、喉が渇いていれば白湯を一杯。落ち着いたところで「まだ外は暗いから、もう少し横になろうか」と促します。説得するのではなく、安心させてから戻す。この順番だけ覚えておいてください。

付き合う時間は、長くても15分ほどが目安です。とことん付き合って一緒に朝まで起きてしまうと、翌日はあなたが動けません。安全さえ確保できているなら、そっと様子を見るだけの夜があってもいいのです。

玄関の鍵を開けて外へ出ようとする場合は、夜間不眠より一段上の備えが必要です。徘徊への対策は別の記事にまとめているので、心当たりがあれば読んでみてください。

対応5|医師とケアマネに、早めに相談する

夜の眠りに関わる治療や薬の調整は、医師の領域です。市販の睡眠改善薬を自己判断で使うことは避けて、まずかかりつけ医に「夜眠れていない」と伝えてください。原因によっては、受診で大きく改善することがあります。

ケアマネジャーにも同じことを、正直に伝えましょう。デイサービスで昼間の活動量を増やす。ショートステイ(施設に泊まって過ごす短期利用)で、家族が眠れる夜をつくる。使える手は複数あります。

相談員として言わせてください。夜の悩みは、伝えてもらえないと支援する側からはまったく見えません。日中にお会いするご本人は、穏やかに見えることが多いからです。

相談するときは、眠れなかった日の簡単なメモが役立ちます。何時ごろ起きたか、どんな様子だったか。数日分あるだけで、医師もケアマネジャーも格段に動きやすくなります。

あなたが眠れないことが、いちばんの問題です

ここまで、本人への対応を書いてきました。でも相談を受けていて本当に心配になるのは、介護しているご家族の睡眠のほうです。夜中に何度も起こされる生活は、数か月で心と体を削ります。

別の部屋で寝ていいんです。夜の物音のすべてに反応しなくていいんです。人感センサーや見守り機器に任せられる部分は任せて、自分の眠りを守ってください。

週に一晩、ショートステイで眠れる夜をつくることも、逃げではありません。あなたが倒れたら、介護は続きません。眠ることも介護の一部です。

イライラが止まらない、日中に居眠りしてしまう、簡単なことを忘れる。それは、あなた自身の睡眠不足のサインです。介護保険をまだ使っていなければ、地域包括支援センター(高齢者とその家族の総合相談窓口)に電話してください。「夜眠れなくて限界です」という相談は、少しも大げさではありません。

認知症の夜間不眠は、長く付き合うことになりやすい症状です。だからこそ、ひとりで戦わない形を早めにつくってください。夜間以外の症状への対応は認知症の困りごと対応ガイドにまとめています。


完璧な夜を目指さなくて大丈夫。今夜はまず、朝カーテンを開けることだけ決めて、あなたも横になってください。

わすれもの
わすれもの

施設で夜勤明けの職員と話すたび、夜の対応の大変さを実感します。それを家でひとりで担っているご家族には、本当に頭が下がります。全部に付き合わなくていいんですよ。ご本人と同じくらい、あなたが眠れているかを私たち相談員は心配しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました