高齢者施設で生活相談員をしておりますわすれものです。
介護現場では日常的に「見守り」が行われています。しかし、制度として明確な定義がないために、経験年数や職種によって解釈に差が生まれやすい支援のひとつでもあります。
一般的に見守りは、ご利用者の行動や状態を観察し、安全確保と自立支援のために必要な介入に備える行為とされています。つまり「放置」とは真逆であり、介助の前段階ではなく介護そのものです。
さらに、厚生労働省の事故報告や自治体のデータを見ても、重大事故は介助中ではなく見守り中に発生するケースが多いことが知られています。この点からも見守りの重要性が分かります。

スタッフが欠員の中、「フロアの見守りだけでもお願いします!」と簡単に言われたことがありますが、実はこれとてもハードルが高いんです。
見守りはどの場面で行われるのか?
見守りは生活全体に存在しており、以下の場面で行われます。
① 生活動作(ADL)場面
- 食事
- 排泄
- 移動
- 更衣
- 入浴前後
- 起床/就寝
ここでは誤嚥・転倒・転落などのリスクが増します。
② 社会生活(IADL)場面
- 金銭管理
- 買い物
- 訪問対応
- レクリエーション
認知症高齢者では、判断サポートや不安の軽減が必要になる場合があります。
③ 精神心理の観察場面(BPSDを含む)
表情、視線、体の向き、手指の動き、会話テンポなどは、徘徊サインや興奮の前兆として現れることがあります。
④ 夜間帯
夜間はスタッフ配置数が減るため、以下の事故が起きやすくなります。
- 転倒
- 失禁後の歩行
- 離設
- 低血糖や脱水のふらつき
なぜ「見守り=楽な仕事」と誤解されるのか?
介護現場では以下の理由から見守りが軽視されやすい傾向があります。
理由①:身体的負担が少なく見える
外から見ると「座っているだけ」と見えるため、業務負担が低いと思われがちです。しかし内部では、観察→分析→予測→判断→記録→共有を繰り返しています。
理由②:新人向け業務と誤解される
実際は逆で、経験者ほどご利用者の変化に気づけます。
- 認知症の徘徊の前兆
- パーキンソンの前傾姿勢
- COPD特有の息切れサイン
理由③:成果が「見えない」
防げた事故は数字にならず、起きた事故のみ評価されるため可視化されません。防御が成功した業務ほど表彰されないのが現実です。
見守りが簡単ではない3つの理由
① 観察力は臨床スキルだから
観察には段階があります。
- 現象を捉える(見る)
- 情報を整理する(意味づけ)
- 予測する(先を読む)
- 判断する(介入の決定)
これは医療現場と同じく臨床判断です。
② 事故は確率でありゼロにできないから
事故は「管理するものであって、完全に消せるものではない」と医療安全の世界では言われています。
ご利用者の以下の要素を考慮しなければなりません。
- 既往歴
- 認知症状
- 服薬
- 性格・生活習慣
- 心理状態
- 体力
③ 自立支援と安全確保のジレンマがあるから
介護保険の理念は「自立支援」です。しかし一方で事故が起きれば責任が問われます。この二つは常に葛藤します。
例:
- 手すりを持てる人に過介助 → 自立を奪う
- 過剰に見守りを減らす → 転倒のリスク
ご利用者にとっての見守りの価値
見守りは安全だけでなく以下を守ります。
- 尊厳
- 自律
- 安心感
- 役割意識
- 自己効力感
特に高齢者は「迷惑をかけたくない」「自分でできることは自分で」という思いがあるため、見守りは心理的支援でもあります。
事故分析から分かる見守りの重要性
自治体の事故報告や施設報告では以下が多いです。
- 転倒
- 誤嚥
- 徘徊・離設
- 浴室転倒
- 夜間のふらつき
特にヒヤリハットの蓄積は事故予測に有効であり、見守りはその第一発見者になりやすい立場です。
見守りの質を高めるために必要な3要素
- 観察ポイントの共有化(Whatを揃える)
- 声かけ技術の統一(Howを揃える)
- 記録の質の向上(Whyを見える化する)
まとめ:見守りは介護の中核であり専門性である
「楽」「簡単」「誰でもできる」というイメージとは異なり、見守りは
- 観察力
- 判断力
- 経験知
- 事故予測
- 尊厳保持
- 自立支援
といった複数の専門性が統合された支援です。
介護は「できないことを代わりにする仕事」ではなく、「できることを奪わず支える仕事」です。見守りはその象徴と言える支援です。

6つのスキルが求められる「見守り」。ただ立って見渡すだけでなく、ここのスキルを磨いていくと、介護職としての専門性も向上していきます。
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