介護施設で生活相談員をしておりますわすれものです。
「介護」という言葉が、あなたの身近なものになったのは、いつからでしょうか。
- 親の体調が少しずつ変わってきた。
- 入院先から「退院後は介護が必要です」と言われた。
- もしくは、「そろそろ施設を考えようか」と、家族で話し合う時間が増えてきた――
そんなとき、支えになってくれるのが、介護の専門職の人たちです。でも今、現場では介護職の人手不足や離職が大きな問題になっています。
「こんなに辞めるの…?」介護の現場で起きていること
施設に面会に行くと、
「また新しい人だ」
「○○さん、辞めちゃったのかな?」
と感じたことはありませんか?実は、介護職の離職率は低下傾向にありますが、それでも産業計と比べてやや高い水準となっています。しかも、1年以内に辞める人も少なくありません。でもこれは、働く人たちが「無責任だから」ではなく、その背景には、たくさんの葛藤や心の負担があるのです。
理由①:誰かのために頑張るほど、傷つくことがある
介護の仕事には、
「感謝される」
「やりがいがある」
といったイメージがあります。
でも実際の現場では、
「なんでやってくれないの?」
「もっとちゃんとしてよ!」
「早くして!」
そんな言葉がご利用者、またはご家族から飛んでくることもあります…
一対一の介護ならまだしも、施設では数人のご利用者を一緒にケアする事が多々あります。もちろん、職員は必死です。でも、お互いの気持ちがすれ違うと、心がすり減ってしまいます。
「わたし、頑張ってるのに……」
「私の大変さも分かってよ…」
そんな気持ちを抱えながら働いている人も多いのです。
理由②:心も体も限界ギリギリの毎日
排泄介助、入浴、夜勤、認知症の方の対応……介護は、肉体的にも精神的にも負担が大きい仕事です。
中には、ご利用者の気分や病状によって怒鳴られたり、暴力を受けたりするケースもあります。
認知症の対応では、マニュアルがあっても上手くいかないのが現実です。
それでも職員は、何事もなかったように笑顔で対応しなければなりません。
でも、人間ですから、当然疲れます。「もう無理かもしれない」と思いながらも、限界まで踏ん張っている人もいます。
理由③:努力が「報われにくい」現実
どんなに頑張っても、給料や評価にはなかなか反映されない。
「誰かのために」という想いだけでは続けるのが難しい。
そう感じる瞬間が、何度も訪れます。
それでも辞めたくないと思うのは、
「目の前の人を大切にしたい」
「人が好きだから」
という気持ちがあるから。でも、心が壊れる前に、離れるという選択をする人もいるのです。
家族にできること:「一緒に支える仲間」になること
これから介護を始めるあなたに、ぜひ伝えたいことがあります。
介護職は、
魔法使いではありません。
すべてを完璧にこなせるスーパーヒーローでもありません。
でも、一緒に支える仲間にはなれます。
「ありがとう」
「助かっています」
「あなたで良かった」
たった一言で、職員の心が救われることもあります。時には、ケアの内容で意見がぶつかることもあるかもしれません。でも、その先にあるのは、あなたの大切な家族の暮らしです。
介護の「現実」を知ることは、やさしさの第一歩
介護職の離職が多い――それは、働く人たちの「弱さ」ではなく、「一生懸命さ」の裏返しです。
「介護は誰でも出来る」
という概念が一般的にあるようですが、
「誰でもできる=専門性が低い」
というわけではありません。質の高い介護や専門的な支援には経験・知識・技術が不可欠であり、
「誰でもできるが、誰でも良いわけではない」
というのが現場の実態です。
介護の現場を知ることで職員との関係がやわらぎ、あなた自身の心の負担も少し軽くなるかもしれません。これから始まる介護の日々が「仲間と歩む時間」になりますように。
そして今、現場で頑張っているあなたへ
もしこの記事を、介護の現場で働くあなたが読んでくださっているなら――まずは、本当にお疲れ様です。
離職の多い現場で、まだそこにとどまっているあなた。
もしくは、「もう限界かも」と感じながら、なんとか踏みとどまっているあなた。
どうか、自分を責めすぎないでください。あなたが辞めたくなるのは、誰かに甘えているからではなく、それだけまっすぐに向き合っているからです。誰かの人生に本気で関わるというのは、それだけ心がすり減ることでもあります。
疲れたら、無理をせず、立ち止まってください。ときには職場を変えることだって、自分を守る選択です。「逃げる」ではなく、「次に進む」ための勇気でもあります。それでも、もしあなたがまだ介護を続けたいと願うなら――どうか、「ひとりで頑張らない」ことを大切にして下さい。
頼れる人がいないなら、誰かに話してください。感情を押し殺さずに、安心して吐き出してください。あなたが誰かを支えるように、あなたにも支えてくれる人が必要です。あなたがそこにいてくれることは、誰かにとっての希望であり、救いであり、誇りです。
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