高齢者施設で生活相談員をしておりますわすれものです。
認知症の方と接していると、
「どうして分かってくれないの?」「さっき説明したのに…」
と、戸惑う瞬間があるかと思います。
実はこれ、あなたが悪いわけではありません。
認知症の方に「説得」が響きにくい理由が、ちゃんとあるのです。
ここでは、家族の負担を軽くしながら、
気持ちが穏やかに伝わる接し方をまとめています。
理由①:記憶より“感情”が優先されるから
認知症になると、言葉の意味を理解して記憶する力が弱くなります。
その一方で、喜び・不安・安心といった「感情」を受け取る力は残りやすいのが特徴です。
つまり、
- どんな言葉を使ったか
よりも - 相手がどんな雰囲気で話しているか
の方が強く伝わるのです。
理由②:「正しい説明」が混乱を招いてしまう
家族としては、「誤解を正してあげたい」「ちゃんと理解してほしい」と思いますよね。
でも認知症の方には、
正しさを押し付けられると不安が高まり、混乱しやすくなる傾向があります。
「いや、それは違うよ」
「さっき言ったでしょ」
といった言葉は、実は逆効果になりやすいのです。
理由③:焦りや緊張がそのまま伝わる
言葉の内容よりも、
- 表情
- 声のトーン
- 視線
- 身体の動き
といった“雰囲気”から情報を受け取ります。
こちらが焦っていたり、不機嫌だったりすると、そのまま不安として伝わります。
逆に、穏やかに話すだけで相手も落ち着きやすくなります。
理由④:説得より「受け止める」ほうが安心につながる
認知症の方にとって大切なのは、
“正しさ”よりも“安心できるかどうか”。
「そうなんだね」「心配なんだね」と
まず気持ちを受け止めてもらえると、心が落ち着きます。
“不安が減る=困りごとも減る”ことが多いので、
結果的に説得しようとするよりずっとスムーズになる場合も多いです。
理由⑤:関係がギスギスしないから
説得を続けようとすると、どうしても「分からせなきゃ」という気持ちが大きくなり、関係が疲れてしまいます。
しかし、
説得を手放す=家族がラクになる
ということでもあります。
「分かってもらえなくてもいい」
「正しさを求めなくてもいい」
そう思えるだけで、介護はずっと優しくなります。
▷ 説得をやめたら関係が良くなった実例
あるご家族は、お母さんが「家に帰りたい」と言うたびに
「ここが家ですよ」と必死に説明していました。
しかし何度言っても納得せず、毎回トラブルに。
そこで、
「そうだよね。家が気になるよね」と受け止める対応に変えたところ、
お母さんが安心して落ち着く場面が増えました。
“理解させる”から“安心させる”に切り替えただけで、
関係が大きく変わったのです。
▷ 穏やかな雰囲気を作る3つのコツ
● ① 否定しない
間違っていても「そうなんですね」と一度受け入れるだけで安心感が生まれます。
● ② 焦らせない
急がせると不安が増えるため、「ゆっくりで大丈夫ですよ」が効果的。
● ③ 寄り添う姿勢を大切に
“正しい言葉”よりも“安心できる態度”のほうが伝わります。
▷ 家族が疲れないために:完璧を目指さないでOK
介護は「根気」よりも「雰囲気」です。
うまくいかない日があっても、それは普通のこと。
あなたの態度・雰囲気が、何より大きな支えになっています。
🌿 まとめ
認知症の方には、どれだけ丁寧に説明しても思ったように伝わらないことがあります。
それは“理解できないから”ではなく、記憶や判断よりも“感情”のほうが強く働くためです。
だからこそ、「分からせること」を目指すよりも、「安心してもらうこと」を大切にしたほうが、結果的にうまくいきます。
説得を手放すだけで、家族の心の負担はぐっと軽くなります。
そして何より、穏やかな雰囲気で寄り添う姿勢こそが、認知症の方にとって一番の安心材料になります。
あなたが日々届けている“まなざし・声・態度”は、必ず相手の心に伝わっています。
完璧を目指さず、今日できる小さな優しさを積み重ねていくことが、認知症の方との良い関係を育てていく一歩になるのです。

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