高齢者施設で生活相談員をしておりますわすれものです。
高齢者の転倒は、介護の中でもっとも多い事故のひとつ。
骨折や入院につながることもあるため、家族も介護職も「どうすれば防げる?」「もし転倒したらどうしたらいい?」と不安になりますよね。
この記事では、
・転倒を防ぐための5つのポイント
・実際に転倒が起きたときの落ち着いた対応
をやさしく解説します。

起きやすい転倒事故であるからこそ、実際に転倒した場合の対応をしっかり学んでおきましょう。
転倒は“偶然”ではなく“積み重なり”で起きる
転倒には必ず理由があります。
- 足元がおぼつかない
- 夜間にトイレが近い
- 認知症で歩き回る
- 家具の位置が合っていない
- 声かけのタイミングがずれた
「転びやすい条件」がいくつか重なったときに、事故は起きやすくなります。
つまり、ひとつずつ原因を減らせば、転倒は確実に減らせるということです。
【対策①】動作の“前触れ”を観察する
転倒の多くは、立ち上がりの瞬間と方向転換のときに起きます。
こんなサインがあると要注意です。
- 何度も立ち上がろうとする
- 足で床を探るように動かす
- 手すりを探してキョロキョロする
- 落ち着きがなく立ち歩きが増える
「そろそろ動きそうだな」と気づくことが、転倒予防の第一歩です。
【対策②】“声かけの順番”を守る
声かけは、この順番が安全です。
①名前を呼ぶ
②目線を合わせる
③動きを止めてもらう
④これからの動作をゆっくり伝える
⑤一緒に動く
急に支えようとすると、かえってバランスを崩すことがあります。
ゆっくり・低い声で・短い言葉で が基本です。

後ろから「○○さん」と声をかけることも、振り向きざまにバランスを崩される可能性が高いので、止めましょう。
【対策③】夜間の環境を整える
夜の転倒はとくに多いです。
- 足元灯をつける
- トイレまでの動線に物を置かない
- いつもの位置にスリッパを置かない(滑って危険)
- 必要時はセンサーライトを使う
夜間は見えにくく、判断力も落ちやすいため、“光”と“動線のシンプルさ”が重要です。
【対策④】“動きたい理由”を見つける
人は理由があるから動きます。
- トイレに行きたい
- 何か探している
- なんとなくそわそわする
- 認知症で目的がわからないまま歩きたい
理由がわかると対応が変わり、無理に止めなくてもよくなります。
行動の裏側にある気持ちに目を向けることが、転倒予防につながります。
【対策⑤】“歩く力”を残しておく
歩く機会が減ると、その分だけ転びやすくなります。
- 軽い散歩
- 室内での歩行
- 手すりを使った立ち座り練習
「動かないほど転びやすくなる」–––この感覚はとても大事です。
◆ もし転倒してしまったら…落ち着いて“順番”で対応
すぐに起こさない
まず「痛いところはない?」と声をかけ、動かす前に状態を確認します。
無理に起こすと、骨折や脱臼を悪化させる可能性があります。
どこを打ったか見る
- 頭
- 腰
- 肩
- 手首
ぶつけた場所を確認し、腫れ・変形がないかチェックします。
必要なら医療機関へ相談
頭部打撲、強い痛み、動けないなどがあれば、早めに受診が安心です。
その後の“家族への説明”はシンプルに
介護職として大切なのは、
「責められる前に、落ち着いて状況を共有すること」。
- どんな状況で
- 何をしていて
- どう見つけたのか
- 今はどんな様子か
- 今後どう対策するか
この5点を伝えると、家族は安心します。
まとめ|転倒は“予防”と“落ち着いた対応”でリスクを減らせる
高齢者の転倒は、どれだけ気をつけていても完全にゼロにすることは難しいものです。
だからこそ大切なのは、「転ばせない完璧さ」を目指すことではなく、転倒のリスクを少しずつ減らしていく視点と、万が一のときに慌てない備えです。
日頃から
- 立ち上がりや歩き出しの前触れに気づくこと
- 声かけのタイミングや順番を意識すること
- 夜間の環境や動線を整えること
- 「なぜ動こうとしているのか」という気持ちに目を向けること
こうした小さな工夫の積み重ねが、大きな事故を防ぐ力になります。
そして、もし転倒が起きてしまっても、
慌てて起こさず、状態を確認し、必要な対応を落ち着いて行うこと。
この「順番を守る姿勢」が、本人の安全を守るだけでなく、介護する側の不安や後悔を減らすことにもつながります。
転倒は「誰かのせい」ではありません。
年齢や病気、環境が重なった結果として起きるものです。
だからこそ、自分を責めすぎず、次に同じことが起きにくくなる工夫を一緒に考えることが、介護において何より大切です。
完璧な介護でなくて大丈夫。
できる範囲で予防し、起きたときには落ち着いて対応する。
その積み重ねが、ご本人の安心と、あなた自身の心の余裕を守ってくれます。

生活相談員は、ご家族に転倒や事故を「0」にすることは出来ません、と理解を求める必要があります。それが、介護現場にプレッシャーを与えず、負担を減らすことにも繋がっていきます。



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