【認知症の兆候とその対応】
認知症は、脳の障害により、記憶力や思考力が低下し、日常生活に困難をきたす状態です。具体的に、どのような症状が現れるのでしょうか?今回は、いくつかの例を交えてご紹介します。
短期記憶の低下
認知症の初期段階でよく見られる症状の一つが、短期記憶の低下です。日常的な出来事を忘れてしまうことが多くなります。例えば、食事をしたことを忘れて
「さっき食べたよね?」
と何度も尋ねるようになります。
有名なテレビ番組『だいじょうぶだぁ』で、志村けんさんが演じたおじいさんが何度も
「飯はまだか?」
と聞くシーンがありますが、まさにそれが認知症における短期記憶の低下の典型例です。このような反復的な質問をされることもよくあります。
また、同じものを何度も買ってくる、同じ話を繰り返すといった症状もよく見られます。
幻覚・幻聴
幻覚や幻聴も認知症の特徴的な症状です。実際にないものが見えたり聞こえたりすることがあります。例えば、誰かが部屋にいると感じたり、ネコがいると見間違えることがあります。
幻聴としては、他人が自分の悪口を言っているような気がしたり、誰かが自分に話しかけてきたりすることもあります。これらの症状が出ると、本人は非常に不安になり、周囲とのコミュニケーションが難しくなることがあります。
性格の変化
認知症が進行すると、性格の変化も現れます。以前は穏やかだった人が急に怒りっぽくなったり、逆に落ち込んだりすることがあります。また、不安感が強くなったり、物事に興味を示さなくなったりすることもあります。
「最近、以前とは違うな」と感じることがあれば、そのサインとして認知症の症状を疑うことが必要です。
失行(物を使えなくなる)
認知症の進行とともに、今までできていたことができなくなる「失行」が現れることもあります。食事の際、箸やスプーンの使い方が分からなくなったり、歯ブラシを持っても上手に歯磨きができなくなったりします。
また、リモコンの操作や服を着ること、家電を使うことが難しくなります。これらは、物の認識が困難になるため、日常生活が支障をきたします。
見当識障害
見当識障害は、時間や場所、人物に対する認識が不正確になる症状です。時間の感覚が失われ、昼夜が逆転したり、日付や季節を間違えたりします。また、今自分がいる場所が分からなくなることもあります。
進行すると、家の中で迷子になったり、家族が誰なのか分からなくなったりすることがあります。これが最も辛い症状であり、家族や介護者の負担が増します。
自覚の難しさと早期の気づき
認知症は、本人が自覚しにくいことが特徴です。進行のスピードや症状の現れ方は個人差が大きいため、家族や介護者が早期に気づくことが重要です。
例えば、「物忘れが増えてきたけど、年齢のせいだろう」と軽く考えてしまうことがあるかもしれません。しかし、それが認知症の兆候である可能性もあります。年齢による物忘れは、情報を忘れても思い出せることが多いのに対し、認知症では出来事そのものを忘れてしまいます。
早期発見の重要性
認知症は早期に治療を始めることで、その進行を遅らせることができます。もし、何かが違う、何かが変わったと感じたら、その直感を大事にし、専門の医療機関で相談することが大切です。早期発見が、本人にとっても周囲にとっても、生活の質を保つために非常に重要です。


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