人は環境の変化に弱い

介護

高齢者施設で相談員をしておりますわすれものと言います。

今回とても悲しい出来事がありましたので、生活相談員としての思いを綴ってみます。

利用者さんの自殺

先月、ショートティの契約を行い、その後2,3回ご利用され、私の名前も覚えてくださり、「また来ますよ。」と、別れた後の事でした。

他のサービスも、ご利用されていましたが、全くそのような雰囲気もなく、関係スタッフ一同愕然としたと聞いております。

激変した生活環境

個人情報保護もあり、詳細は控えますが、

  • 住み慣れた環境から、県内に引っ越しされて来た
  • 一人暮らしとなり、在宅の生活を継続するためにも、福祉サービスをバタバタとご利用する事になった
  • 家族の援助はあっていたようだか、足腰が弱らないように、自宅でも一生懸命リハビリをされていた

契約時に、ご本人·ご家族から、生活歴〜現在に至るまでの情報をお聞きしますが、「大変だ」という思いが一番でした。

そのご本人は、ほとんど認知症がなく、自宅で生活出来るレベルで、口数は少ないですが、話せば笑顔も見られる優しい方でした。

サービスをご利用されない日は、室内の歩行練習を何往復もされていたそうです。

悪い事が重なる

ケアマネジャーより、「月末に手術が決まった」と連絡が入りました。その数日後、ご自宅で転倒されたらしく、いたるヶ所に内出血が出来たと情報をもらいました。

そして、後日自ら命を絶たれました。

「手術」と「転倒」という負の連鎖が重なり、気持ちがいっぱいいっぱいになられたのでしょうか。もちろん、それ以外にも、要因はあったのかもしれません。

家族も思いがけない出来事で、落胆されたと伺いました。それだけに、なんの前触れもなく、だけど、ご本人は気持ちが追い詰められていたのかもしれません。

環境の変化から起こるストレス

初めてご利用される方は、今までの環境の違いからか、生活上のストレスを感じやすく、せん妄や幻覚·興奮等の「BPSD(周辺症状)」を、起こしやすい傾向があります。

私達でさえ、新しい職場·人間関係になると、神経をすり減らし、疲れを感じてしまう事も少なくありません。

しかし、この事が高齢になり、さらに認知症があると、私達の想像以上に、自分の居場所や環境の変化に、多くの戸惑いや不安を感じていると言われています。

介護施設の利用者は、ほぼ認知症があります。事前の情報では、「穏やかで問題ないですよ」と、伺っていたのに、いざご利用されると「帰りたい」等の不穏症状や、夜間不眠といった症状があり

「情報と全然違う!」

と、生活相談員が、現場のスタッフから責められる傾向がよくあります。(私の施設だけかもしれませんが。。)

そこで、お決まりのように伝えるのが「環境が変わったんだから、もう少し様子を見ましょう」と、現場には伝えます。

「お決まりのように」と言うと、軽々しく無責任に思われるかもしれませんが、事実数日もすれば、落ち着かれるケースがほとんどです。

明らかな精神疾患や重度の認知症であれば、根本的な治療や服薬が必要でしょうが、そうでない場合は、

「安全を確保しながら、まずは様子を見る。」

が、最もベストな選択だと思います。

生活相談員として出来ることは

今回自殺された利用者さんは、数回利用されたショートスティでは、何も問題なく穏やかに過ごされていました。介護スタッフからすれば、「手がからない素敵な利用者さん。」

施設の利用者は、生活面で介助が必要な方がほとんどで、また認知症もある事から、それだけ手間がかかります。それ故、ある程度自立された認知症症状が見られない方が、スタッフが来てほしい利用者像になりやすいです。

でも、それは逆に言えば、利用者から訴えが少なければ、接触が少なくなってしまう可能性が高くなります。

今回の利用者さんは、

  • 他県からの引っ越し
  • 一人暮らしの生活
  • 福祉サービスの開始
  • 一生懸命なリハビリ
  • 手術が決定
  • 今までなかった転倒怪我

数ヶ月で、これだけの事が起き、生活環境が一変しました。ご本人は、大変きつかったと思います。ただ、このような結果になってしまった事は、残念でなりません。

生活相談員として、施設を利用された方による環境の変化には、注意して観察していきますが、在宅サービスには、居宅のケアマネジャーがいるため、そこまで介入することはありません。もちろん日々の出来事は報連相していきます。

ショートスティでいらっしゃれば挨拶をし、「お変わりないですか?」と、話はしていました。もしかしたら、ご本人からSOSがあっていたのかもしれまさん。

契約時に、「大変だ」と思った気持ちを、言葉にして伝え、もう少し寄り添っていたとしても、結果は変わらなかったと思います。

ただ、人間として環境の変化には、誰しもが不安を感じている心理的な面を、再確認させれた次第です。

お決まりのように言っていた言葉に、相談員としてもっと責任を持って、利用者を見ていく必要があると教えてもらった気持ちです。

「うちの施設をご利用してくださり、ありがとうございました。」

コメント

タイトルとURLをコピーしました